20xx年、化石燃料は掘り尽くされ、原発も偏在する。
ウラン鉱石の採掘国の輸出制限により、停止状態に追い込まれ、
頼みの自然エネルギーも危機的な気候変動に翻弄され、
エネルギーは供給不足。電力不足でAIも働かず、
人々の生活は不自由を強いられているのであった。
そんな近未来の地球、日本のある地方都市、S市の物語。
季節は晩秋。人々は一日の労働の疲れを癒やしに銭湯へ。
湯銭を払った客は、番台でじょうごとゴム管を渡される。
洗い場で体を洗い、湯船に浸り、じょうごにゴム管を継ぎ、
壁のコックにゴム管の片方を継ぐ。湯温は少し熱め。
暫くすると客のお腹が張ってきて、ごめんあそばせとばかりに
客は腰をちょっとくねらせて、プププとやる。
出てきた気体はじょうごで受け、ゴム管を通り、燃焼室に送られる。
この時代、高効率で可燃性ガスを発生させる微生物が発見され、
人間の腸内環境にも適応し、人体は性能の良い可燃性ガス発生装置に
なっていたのだ。 人々は少し熱めの お湯に浸ることによって
老廃物は全てガス化、健康を取りもどす。
合せて燃焼装置の進歩によって、少ないガスで十分お湯を沸かす
ことができるのであった。
老若男女、湯船で世間話をしながら、おっと失礼、ごめんなさいよ
といって腰をひねる。年若い娘さんも 少し頬を染めながら腰を浮かす。
これは、この時代の新い生活スタイルなのだ。
そして、やがて発酵は終息し、一連の作業は終る。
熱いお湯に浸り十分に温たまった客は、帰りがけじょうごとゴム管を番台に返す。
店からは、また明日も頼むねとさつまいもが手渡される。
客は、洗いおけの中のさつまいもをゴロゴロさせながら、
温たまった体と、すっきりしたお腹を実感しながら、笑顔で家路につく。
エネルギー危機の時代の人々のささやかな暮らし方であった。
完
石上農園
2026.11.


